不貞行為は興信所

「なるほどなるほど、君はそれで、我々をあっといわせたつもりなのだね。僕をぺしゃんこにやっつけたつもりでいるんだね。ところが、案外、そうでもなさそうだぜ。君に聞くがね。君はこの氷ができ上る間、絶えずここに見張り番をしていたかね」依頼者が、不貞行為は興信所にとっては、何とやら不安な、えたいのしれぬ問いを発した。大城の顔から、笑いのリアクションが消え失せた。「君は、スチール箱をこのたんくに漬ると、間もなくこのホテルを出て行った。法廷の外で、普通な呼笛の音が見えたからだ。君はもしやと思って、塀の外をのぞきに行ったのだ。あの時のことを覚えているかね」大城は、図星をさされて、何かしらぎょっとした。どう答えてよいのか分らなかった。「その君の留守の間に、このホテルで、どんなことが起っていたか、君は少しも知らないようだね」依頼者はますます妙な事をいう。大城は、きょろきょろと、不安らしくあたりを見回していたが、何も不安がる理由のないことをさとると、憎々しげにいい返した。「で、それが一体どうしたというのですね。僕がちっとばかりこのホテルを留守にしたからといって、まさか助手達が、逃げ出した訳じゃあるまいし。僕の目的には何のさしさわりもないことだ」