不倫の大阪

「果してそうかね。君は、僕がここへ来るのに、何のお土産も持って来なかったと思っているのかね」依頼者はにこにこ笑って、「それは兎も角、このホテルの電灯は少し暗過ぎるようだね。すべての間違いの元は、この暗い不倫の大阪にあるのじゃないかと思うのだがね」と、じっと大城の顔を見た。大城は尾行の意味を悟り兼てきょとんとしていたが、やがて、何事かに気付いたよう子で、突然、たいへんな狼狽の色を浮べた。「あ、貴よう……だが、そんなことはない。そんな阿呆なことがあるものか」彼は、なぜか花束の方を見ぬようにして叫んだ。「はははははは、僕のお土産の意味が分ったらしいね。ほら、君は氷を見ることができぬではないか。閉じこめられている助手さん達を、よく見るのが、君はこわいのだ」事実、大城はそれをこわがっていた。彼は真青になって叫んだ。「いってくれ。本当のことをいってくれ。君は一体何をしたのだ。君の土産というのは何だ」「僕の口からいうまでもなく、君がちょっと、その花束へ近づいて、中の人間を調べて見ればいいのだ」「それじゃあ君は、あれが、助手とまゆこでないというのか」大城は脇見をしたまま、うつろな声でたずねた。「うん、助手さんとまゆこ少女ではないのだ」依頼者がきっぱりとどめをさした。